[ 永久なる此処 ]




 貴方は木のお人形。
 私は世界を旅するもの。
 なんのために?
 生きるべき世界に帰るために。
 貴方の世界はどこ?

 他の人たちのように、心を見つければ。

 そうすれば、貴方は生きた姿になるの?

 生きた姿になって、貴方は貴方の世界に生きるの?



 目が覚める。
 そのたびに私はもう一度目を閉じる。
 目覚めた場所が、きのうと同じ場所であるかどうか、確かめるために。
 再び広がった世界が同じならば、きっと同じ。

「今日も」

 言葉を止めて、息を吸い込む。生きてる。私は生きてる。大丈夫、今日も生きてる。思うままに体は動く。光は眩しく、その熱も感じる。
 今日も生きてる。

「フェリス、起きているか?」

 二回、ノック音。
 私はベッドから起きあがり、寝間着を整えてドアを開けた。

「おはよう、トキオ」
「ああ」

 短い返事。
 瞳から下を覆う布地の向こうは、何も見えない。
 私は心を悟られぬよう鍛練を積んだその顔を見上げて、少しだけ微笑んだ。

「大丈夫よ、すぐに準備するわ」
「わかった」

 ドアを閉めると、掛けておいた服に手をかける。
 白い、私の装束。
 戦うためだけの。

「女神様、私は本当に戻りたいのでしょうか」

 着慣れたドレスに腕を通した。
 何も考えずとも手は動く。
 意志には関係なく、私の身体は戦いに赴く準備を始める。

「私は戻るべきなのですか」

 私は私のいた世界について、ほとんど何も覚えていない。
 覚えているのは連れ去られた瞬間だけだ。
 たった一人、洞窟の中で私は何を思い、何を目指して歩いていたのだろう。

「この世界は私の生きるべき世界ではないけれど、トキオが存在できるのはこのような世界だけ」

 力のアークが与える、仮初めの命。
 命が心そのものならば、トキオもまた仮初めの存在なのですか。

「……行かなきゃ。トキオが待ってる」

 それでも戻らなくてはならないのだろう。
 旅路の果てに何が待つとしても。
 それが永久の別れになるとしても。



 生きるべき世界へ。



 大丈夫よ、今日はまだ生きてる。
 大丈夫、まだ貴方は此処にいる。








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2003年1月17日に日記内にて書いたものを少し修正。
トキフェリの基本はこんな感じです。



2003.7.19