[ ある日見た夢 ]




 奇妙な夢で目が覚めた。
 ベッドの中でうーん、と考え込む。
 ぼんやりとした記憶の中に見えてくる情景。





「アンタ、起きなよ!」

 シャッと勢いのいい音を立てて、彼女がカーテンを開け、部屋の中に朝日が射し込んでくる。
 早起きの得意な彼女は、朝から元気がいい。
 てきぱきと仕事をこなし、朝食が出来ると同時に朝寝坊な僕を起こしてくれる。
 僕は彼女の声と共に起きる毎日が結構気に入っていた。

「ったく旅してる頃はこんなじゃなかったってのにさ! 一生マスク付けて暮らせば?!」

 彼女は僕のおでこを人差し指で押して、それからパチンとはじいた。
 力自慢の彼女だけに、それはちょっと、というか大いに痛かったりするのだ。

「無茶言わないでよ……あの頃、寝るのにどれだけ苦労したことか! みんなと同室のときは落ち着かないのと緊張で眠りが浅くなるし」

 僕は額をさすりながら、ぼそぼそとこぼす。

「そういや寝るときもマスク付けっぱなしだったね。あんときは、エレンと一緒に大笑いしたもんよ」
「しょうがないよ……一応覆面の怪傑だったんだから。仲間と言えども正体バラすわけには、ね?」

 町のヒーローだったはずが、世界を救う旅に出ちゃうことになったんだから、自分でも驚きだ。
 そんなことは考えてもみなかっただけに、当時の生活はかなり大変なことになっていた。
 朝から晩までマスク姿。
 蒸れて蒸れて、偽ロビンと交代制にしてほしいくらいだったよ。
 グレートアーチやアケなんか最悪だった。
 エレンやユリアンは楽しそうだったけど、ロビンにとっては地獄そのものだ、熱すぎて。

「アンタのどこがよかったんだが……我ながらわかんないよ」
「……僕もね。君が僕と結婚してくれるなんて、思ってもみなかった」
「その自信のなさ過ぎるところはアンタの欠点だね。理由はどうあれ、このアタシを惚れさせたんだ、ビッと男らしく胸張ってもらわなきゃ!」

 逆光で顔がよく見えないけれど、威勢のいい声とは裏腹にたぶん彼女は照れている。

「君のために、頑張るよ」
「そりゃ頼もしいお言葉だね、ダンナ様」

 ゆっくりと彼女が僕に顔を寄せ、二人のシルエットが重なって……。

 暗転。
 そこで僕は目が覚めた。





 ……あれは、ノーラ、だったような……。
 そうでなかったような、やっぱりそうだったような、いやでもまさか。

 そりゃノーラはハキハキしたいい人だし、僕も好きだったけど、でもそういう風に見たことなかったしなぁ。
 うぅ、何だか顔が熱い……。
 気付かないうちに意識してたりしたのかな……はぁ、恥ずかしい。

 トントンと肩を叩いて(この年で肩凝りってのも情けない話だ)、僕は窓を開けた。
 ヤーマスは平和だし、カラッとしたいい天気だし、言うことはない。

 みんな、元気にしてるかな。
 久しぶりに、会いに行くのもいいかもしれない。

 夢を見たせいってわけじゃないけど。






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史上初だと思うんですがロビン(ライム)×ノーラ。
尻に敷かれること間違いなし将来。
そしてきっと子沢山。頑張れライム……!

初期設定ではライム押し倒されてました(笑)



2003.7.7